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FF16小ネタ集⑪

クライヴとジル。 本編内におけるふたりのちょっとした感情の変化。

※高橋和哉さんのオーロラアートのふたりに触発されて書いたこばなし。

・対(クライヴとジル)

俯く彼を見て雷と知恵を司る召喚獣ラムウを宿す男が言った。 ベアラーは言葉を話すことも視線を合わせることも許されない、と。 シドの隠れ家に来てから誰かと会話する、ということをぎこちないながらも行なってきた。それでもこの13年間人ではなくベアラーとして扱われて来たことを思い返すと未だ他者に拒まれる感覚は残っている。向き合うのは任務の相手で生き残るには命を奪う、それだけの日々だったのだ。 炎のドミナントを追うという決意に動かされ―本当は目の前のこれだけはと流されていたのかも知れない―ガブがまっすぐに俺も家族を奪われたからな、気持ちは分かるぜと否定もせずただ為すべきことを今は考えて良いと促がしてくれたときは同意してくれたという感覚よりも自分が誰かと繋がりを持てたというもう得ることはないのだろうと考えていた感覚が再び蘇ったのだ。

そしてシドに任せて目を覚ます前に去ろうとしていた君が目覚めて。 俺と同じくトルガルを優しく撫でている姿を見てほっとしたんだ。 元気になったな、と拠点の彼らが次々と言葉にし。カローンには死んだ目をしていたのにようやく生気が戻ったもんだと一聴すると皮肉に思える彼女らしいその調子に気遣ってくれていたのだと気づく。そうした繋がりを本来はずっとずっと持ちたかったのかもしれない。 悲しみの入り江の教会にて現実を。フェニックスゲートにて真実を知りイーストプールにて今のヴァリスゼアの現状を思い知らされ。 帰路につく道中シヴァのドミナントとして氷の魔法を凛として指先から掌に伝えて唱えて放つ彼女の姿を見て。己の左手と左腕を流れるフェニックスの祝福とは異なる炎の力を自らの身体に流し込みながら自身がイフリートのドミナントだとシドの前で受け入れたことを伝えた。俺と彼女の決意だと手を取り合って。

ジルはシドからドミナントとベアラーの状況についてオリフレムにて知らされた日から後は―クライヴとシドが誓い合った証を見つめる度にそのことを思い出していた。ドミナントが道具として扱われる理由。この身は兵器でしかなかった。人ではなく獣のようにブリザドと呼ばれる氷魔法―氷の雨を降らせ相手の肉体を切り裂いていたのだ。 氷のように固い決意でそう遠くない日にあの国へ戻るとそう決めていた。未だクライヴにはそのことを告げていない。 動き出せていない日々が長かったのと小さい頃離れた北部を除けばロザリアだけが少女の時代は彼女にとって世界だった。戦いはこれからもある、戦いに出ないからこそ知らなかった現実をあの国で自らの手を汚しながら知ることとなった。 捕らえられていた鉄王国では戦いの日々でどこで何が起きているのか考えることも出来ず、目にすることもなかった。 彼と戻ってから実際にふたりで目にしてきた。自分の想いひとつではどうにもならない、それでも自分のただひとつメティアに祈った願いが叶ったのだと相反するものを彼女は抱えていた。 彼の傍にいる。いられる、のではなくいるのだ。心が動いていると感じる日々を重ねながら。

潜伏するようになってからインビンシブルをクライヴが見つけ出して。保護出来たベアラーたちも増えていき石の剣の部隊も揃ってきたもうすぐ5年はあの日から経とうとしていた頃。 ザンブレク皇国内のキングスフォール、霧の深い河付近をふたりとトルガルで馬(チョコボ)を駆け巡らせていた。近くの集落でベアラーたちの取引が行われていると石の剣のオーガストから報告が入ったのだ。 その時に火のドミナントは俺なのにと落ち込んでいるとガブを助け出しシドの真実を突き止めるんだと言い聞かせるように語ってくれたのが切掛けで立ち上がり始め。 そうして目覚めて間もない君に会いに行ってこいと拠点の彼らが背中を押してくれたのだ。 今は自分から誰かに対しても前に進み出るように―時には怪我も構わずすぐ無茶をするとタルヤに怒られようと―そう決めて動いている。 取引場所はかつてガブがザンブレク皇国兵に追い詰められていた場所に近い。馬(チョコボ)は2頭とも近くの森へ潜ませ。トルガルはガブの危機を見つけた高い所からすぐに合図を送ってもらう様に頼む。 ジルとふたりで付近の岩陰に隠れた。左手に小さな炎を灯して調子を見る。怪我の影響はない。 隣に立つジルは右手に氷の魔法を宿す。望んで戦ってきた訳ではない彼女だが顕現出来ることも相まってコントロールに優れている。 視線を彼女へと向ける。静かに頷いてくれた。前で様子を窺う彼の右手を彼女その手でそっと取る。この5年間幾度となく視線を絡め何気なく傍に寄り沿うとそうしてきた。 お互いの決意と。未だ顕現がままならない彼を守り支えると。 じっとジルを射抜くように見つめる。彼女はクライヴのその青い瞳を真剣に見つめ返す。

君が俺に話してくれていないことが、ある。 私はまだあなたに話せない、の。

それでも―。 この炎の想いをいつか君に伝えたい。そばにいてくれる感謝だけでなく。俺自身からの。 この氷の意思は誰かを凍てつかせるものではない。あなたとの誓いを。 ふたりで決めたことを最後まで貫く為にある。

…そして、いつか溶かして。ほんとうの私を見つけて欲しい。

絡めていたほんのひととき時からふたりは動き。今目の前の現実へ意識を向ける。 マザークリスタル破壊へと再び動き出すその為に。

・歩み寄る(ジル→クライヴ)

ここの所はクライヴがひとりで拠点を出ることが多くなった。

ほとんどいないじゃないか―ミドの大工房にてエンタープライズを皆で完成させると意気込んでいたその時にガブもダリミルの近くであいつに話したぜと教えてくれた。 それと拠点では日々皆が忙しく動いているのだから同じ状況なのだとそれは分かっている。留まることが多くなったのはジルだ。少なくとも彼女自身はそう感じている。 クライヴが今はタルヤと共にノースリーチへ買い物に出た。ささやかな時間ではあるがタルヤにとっては良い気分転換になっているのでしょうねと思う。医者である彼女が拠点から出る機会が殆どないからだ。ハルポクラテスにどちらと行くかねと尋ねられてクライヴもそう考えて彼女を連れ出したのだろう。 ちょっとした買い物はふたりで―許しが出ればジョシュアと一緒にトルガルを連れながら出かけたことを思い出す。子狼だったトルガルはすぐに飛び出してしまっていたのだ。 ジル自身はノースリーチへマダムことイサベラとベアラー保護活動含めザンブレク皇国内の状況を確認し合う機会を含めて幾度も足を運んでいた。それは主に戦いの為に、ではある。 (…行きたかったと話せば良かったのかしら) そう伝えたらクライヴは構わないと言ってくれただろうしタルヤも代わってくれただろう。 …結局我慢をしたのだけど。 頼まれていた用事も終わりインビンシブル内にあてがわれた自分の部屋で少し休もうかと腕を伸ばしているとノック音が響いた。ジル、いいかい?と拠点の皆のひとりひとりの声は耳に慣れたものでこの声がオルタンスだと分かった。 ベアラーの姉妹たちの為に仕入れた布。クライヴに好きな色について聞いたんだと彼女は教えてくれて。せっかくだから縫っておやりなさいなと余ったのを寄越してくれた。 ジルが小さい頃から針子が好きで得意だったのだとクライヴが楽しそうに語っていたよとそう付け加えてくれて。

―ジルは手先がとても器用だな。 稽古を終えて先に屋敷へ戻り縫いものに取り組んでいた彼女に対して彼は温かく微笑んでそう言ってくれて。 嬉しさとほんのりとした温かさ。そしてどこか心が躍るような感覚があったとそう思い出してきた。 どこか心がちくりとしている今の自分よりもっと素直だった、とは思う。 あの時は戦いに向かう彼とは一緒には行けないのだとそう受け止めていた。身体が弱いジョシュアは護身として剣を携え可能な限りの訓練は行なっていたのに対し。 縫ってあるものを見せると彼はすごいなと素直に褒めてくれて。 ―俺に出来ないことをジルはよくやってくれている。 ありがとうと言葉を紡いでくれた。彼のそうした所は本当にずっと変わっていない。 …知っているからこそ、また傍に居て感じられているからこそもう失いたくないと辛くなるのかもしれない。

針と糸を取り出して布へと手を伸ばしすっと糸を通しはじめた。 想いひとつひとつが溢れて来そうになる。 するとインビンシブル全体の気配が騒がしく活気が出て来た。 拠点のリーダーが帰ってくるとこの雰囲気に包まれるのだ。 急いで針と糸を仕舞い布は丁寧に畳んでジルも出て行った。

先にタルヤが昇降機から上がって来てこちらが尋ねる前に今バードルフ達と傷んだ箇所がないか確認しているわよと教えてくれた。 私は良い気分転換になったからありがたかったわと。 ああそれとタルヤはさらに続ける。無茶ばかり続ける彼に対して忠告もしておいたわ。まあ言って聞くような人じゃないって分かっているけど。だから医務室に飛び出したあの日のカルテのことこちらへ来る度に目に入るように置いているのだから。腰に両手をあててまったくと彼女は軽く息を吐いて。

とにかく、頼むわよジル。 言葉にはしないその瞳がそう語っていた。 「それは他でもないあなたしか出来ないのだから」

―あなたを支える。 そう決めたのはあの日から。 そして彼と再会出来てから。 今この時も変わっていないはずだ。

ジルは微笑み頷いた。昇降機から彼も上がってくる。 まず出来ることは歩み寄ることだ。最初にそれをしてくれたのが他ならぬ彼なのだから。

そこからまた始まるとクライヴのもとへお帰りなさいと伝える。

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